
日本の陶芸教室では、温度計(熱電対)のデジタル表示だけを頼りに焼成することが多いかもしれません。しかし、アメリカの陶芸教育において、オートンコーン(ゼーゲルコーン)は「絶対に欠かせない計測器」として教えられます。
その理由はシンプルです。「熱量(Heat Work)」を測るためです。
例えば、「200℃のオーブンで20分焼いたクッキー」と「100℃で40分焼いたクッキー」。合計の温度×時間は同じようでも、焼き上がり(焦げ目やサクサク感)は全く違いますよね? 陶芸も同じです。釉薬が綺麗に溶けるかどうかは、単なる「最高温度」だけでなく、「どれくらいの時間をかけてその温度に達したか」という**時間の積み重ね(熱量)**で決まります。
温度計(デジタル): 「今、空気中が何℃か」を測るもの。
オートンコーン(アナログ): 「作品がどれだけの熱を受け取ったか」を測るもの。
釉薬と同じ成分で作られたコーンが溶けて曲がる様子を見ることで初めて、「釉薬にとっての最適な焼き上がり」を確認できるのです。
オートンコーンは、熱を受けると徐々に柔らかくなり、頭を下げていきます。窯出しの後、コーンがどのくらい倒れているかを確認することで、その焼成の成否を判断します。
直立〜少し曲がる: 焼成不足(Underfired)。温度または時間が足りていません。
90度(先端が床に着く): 完璧(Perfect)。狙い通りの熱量が加わりました。
完全に溶けて平らになる: 焼き過ぎ(Overfired)。熱量が多すぎました。
基本的には、目標とする温度のコーン(ターゲットコーン)を真ん中にし、「一つ下の番手(ガイドコーン)」と「一つ上の番手(ガードコーン)」の計3本を並べて焼きます。
例:Cone 6(約1222℃)で焼きたい場合
左:Cone 5 (完全に倒れているべき)→ これが倒れていなければ、まだ温度が低い。
中:Cone 6 (90度にお辞儀しているべき)→ これがターゲット。
右:Cone 7 (直立、または少し曲がる程度)→ これが倒れていたら焼きすぎ。
ヒューステンでは、目的や窯のタイプに合わせて3種類のオートンコーンをご用意しています。
【推奨No.1】最も正確で使いやすいスタンダード 「支え(土台)」が一体化したタイプです。自分で粘土に挿す必要がなく、常に「正しい角度(82度)」でセットできるため、計測誤差が最も少ないのが特徴です。
用途: 本焼き、素焼きの熱量確認。窯内の温度ムラのチェック。
メリット: 手間いらずで置くだけ。最も信頼性が高い。
コストパフォーマンス重視のプロ向け 細長い三角錐の形をした、昔ながらのコーンです。
使い方: 道具土(耐火粘土)で作った土台に、82度の角度で挿して使用します。
用途: セルフサポートと同様。コストを抑えたい場合や、頻繁にテストをする場合に。
キルンシッター(自動停止装置)専用 「ベビーキルン」などに付いている自動焼成装置(キルンシッター)の爪にセットするための小型コーンです。
注意: 窯の電源を切るためのスイッチとして機能します。熱量を測るためのスタンダードコーンとは役割が異なり、対応温度も微妙に異なります。
コーン番号には、数字の前に「0」が付くものと「付かないもの」があります。これは全く別の温度帯を指しますので、絶対に見間違えないようにしてください。
Cone 06 (約1000℃): 低温。素焼きや、低火度釉薬の温度。
Cone 6 (約1222℃): 高温。一般的な酸化焼成の本焼き温度。
※「マイナス(-)」の意味だと考えると分かりやすいです。数字が大きくなるほど温度が高くなりますが、0が付くと逆になります。
ヒューステンで取り扱う釉薬(Amaco, Mayco等)や電気窯(Skuttなど)は、すべて「オートンコーン(Orton Cones)」の基準で設計されています。 日本やドイツの「ゼーゲルコーン」とは微妙に温度や番手が異なりますので、米国製釉薬を使用する際は、必ずオートンコーンを目安にしてください。

【ヒューステンからのアドバイス】 電気窯の熱電対は、壁から少し飛び出した場所の温度しか測れません。しかし、窯の中は「棚板の真ん中」や「下段のヒーター付近」など、場所によって温度が異なります。 大切な作品を焼く時や、新しい釉薬を試す時は、必ず棚板の各段に「セルフサポートコーン」を置いて、窯の中の本当の景色を確認することをお勧めします。



